我慢嫌いの医師が実践する、ゆるい健康管理術【日常生活編】

目次
  1. はじめに
  2. 食事と運動が基本
    1. なぜ様々な健康法を活用しないのか?
  3. 1. モニタリング
    1. 1.1 目標体重より上の場合
    2. 1.2 目標体重より下の場合
  4. 2. 食事
    1. 2.1 過剰なものの調整
    2. 2.2 不足しているものの調整
  5. 3. 運動

はじめに

私は我慢がキライだ。 目の前にお菓子があれば食べるし、街なかでトンカツ屋を見つけて気分だったら迷わず入る。

「人的資本を最優先すると言いながら話が違うじゃないか」と言われるかもしれない。

その通りだ。全く合理的ではない。

しかし、私はそういう人間だ。これが自分の性(さが)である前提で、いかにして人的資本をまもろうとしているかを紹介したい。難易度は非常に低いため参考にしてほしい。

なお、本記事は一般の方向けである(あくまで私個人の意見。現在通院している患者さんは主治医の指示に従うこと)。

健康管理は大きく以下の2つに分けられる。

  • 日常生活

  • 医療

今回は「日常生活」について、基本的な考え方、モニタリング、食事、運動の順で紹介する。


食事と運動が基本

食事は「普通の食事」を基本とし、明らかに過剰なもの、または足りないものだけをスポットで調整する。

なぜ様々な健康法を活用しないのか?

世に溢れる健康法を私がすべてスルーしている理由は、大きく2つある。

1. 有効性の証明が困難

食事や運動が本当に寿命を延ばすかを証明するには、数十年単位の追跡が必要で、「交絡因子」の処理なども複雑だ。

※交絡因子とは:例えば「運動量」の効果を比較したいのに、グループ間で「喫煙率」が違うと、結果にタバコの影響が混ざってしまうこと。

正式な医学研究では統計的に処理されているが、それでも変数が多すぎる。私の所感としては、ちまたの健康法が現在のガイドライン以上の有効性を示せるとは考えていない。

期待値が低い情報の真偽を精査すること自体を無駄に感じており、各種ガイドラインに載ったものだけ検討する方針にしている。

2. 人間はそこまでヤワじゃない

人間は万年単位で進化してきた。普通の食事をとっていれば必要な栄養はだいたい入っているし、多少の揺らぎは身体がいい感じに調整してくれる。過度に神経質になる必要はない。

酒しか飲まない、厳格な菜食主義、野菜を全く食べない、特定の食品だけを食べ続けるなど、バランスを崩すような「極端なこと」さえしなければいいのだ。


1. モニタリング

毎朝、トイレに行ったあと、食事を取る前に「体重を測る」だけでいい。体脂肪率や筋肉量は不要。シンプルに体重だけ分かればいい。

ネット同期できる体重計だと便利だが必須ではない。ただ毎朝乗るだけでいい。

目標値はBMI 22である。

目標体重の目安
22 × 身長(m) × 身長(m)
例:身長170cmなら、22 × 1.7 × 1.7 = 約64kg

1.1 目標体重より上の場合

以下が、消費する必要のあるカロリーの目安だ。

(現体重 - 目標体重) × 7000kcal
例:身長170cmで70kgなら、(70 - 64) × 7000 = 42000kcal

ここ最近で突然肥満になったのでなければ、現在の食事と消費カロリーで均衡していると考えられる。

仮に1年かけて目標まで減らすなら、1日約115kcal消費すればいい。おにぎり1個分の間食を減らすか、散歩を1時間増やせばいいだけだ。

注意点: たくさん食べた翌日に体重が1kg増えていることがあるが、ほとんどが水と便だ。食塩1gで約100gの水を蓄える性質があるため、1日単位で一喜一憂する必要はない。ただし暴飲暴食したのは事実なので、もとの体重に戻るよう翌日や翌々日の食事をセーブすることが重要だ。

1.2 目標体重より下の場合

BMI 18.5を下回ると低体重だ。BMI 22あたりが最も予後のいい可能性が高く、軽ければいいというものではない。意図してその体重にしているなら、命を削っていることを理解してほしい。各種栄養素が不足している可能性が高い。


2. 食事

2.1 過剰なものの調整

最初にお伝えした通り、私は我慢が嫌いだ。気合いではなく「環境を整備すること」が妥当だと考えている。

間食(カロリー):

目の前にお菓子があれば食べてしまう。 実は、病院の当直室(医師が宿直する部屋)には、たいてい夜食用のカップ麺やお菓子が山積みになっている。私はこの誘惑にやられることが多い。

だからこそ、自宅にはお菓子もカップ麺も一切置かない。外に出て買ってきてまで食べないなら、それは仕方がない。そういう日もある。

どうしても何か食べたい時のために、自宅にはマシな代替品を置いておくといいだろう。

  • ベースブレッド(プレーン): 腹持ちがいい。

  • プロテインバー: 美味しいのでつい食べてしまうが許容範囲。

  • 完全栄養食: 塩分は多めだが、普通のカップ麺よりはマシ。

調味料・外食(塩分、カロリー):

こだわりがないなら、減塩の調味料や砂糖代わりのパルスイートなどの常備を提案する。

外食で定食に汁物が付いてくることがあるが、ものすごく飲みたい時以外は、注文時に除いてもらうか具材だけ食べて残すことをすすめる。

食塩は1日多くても8g、可能なら7gが理想。味噌汁1杯で約1.5gの塩分がある。その貴重な枠を使うほど自分が味噌汁を好きなのか考えてほしい。

ちなみにカップ麺は1つで約5gだ。私がカップ麺を食べる時は、キッチンペーパーに中身を全部出し、具材だけ戻して食べている。

補足:食品添加物などについて

数十年単位の長期的な影響は不明であり、悪さをしている可能性はゼロではない。しかし、私は以下のように割り切っている。

添加物の不確実なリスク < 減塩・甘味料で満足度を維持し、高血圧や糖尿病を防ぐ確実なメリット

これをどう見積もるかは個人の自由だ。

2.2 不足しているものの調整

タンパク質:

必要な量は「標準体重 × 1〜1.5g」(身長170cmなら64〜96g)。鶏もも肉100gあたりおよそ25gなので鶏もも肉を毎日300gくらい摂れているのなら補充は不要だ。普通の食事では不足しやすいと思うため、プロテインでの補助をすすめる。

ただし、2g/kgを超えるような摂取は腎負荷を高めるためボディービルダーでもなければ推奨しない。家庭に子供がいる場合、美味しい味付きだと勝手に食べてしまう可能性があるため、チョコレート味などより無味のものがおすすめだ。

EPA・野菜・食物繊維:

これらも不足しがちと言われるが、意識しすぎるとハードルが上がる。外食時に「できれば魚定食を選ぶ」「野菜や海藻を選ぶ」程度でいい。 よっぽど野菜嫌いならマルチビタミンサプリを適正量で試してもいいが、これまでの人生で無症状なら、そこまで大きな欠乏になっているかは疑問だ。

その他:

生理がひどい女性は鉄が不足していることがあるため、産婦人科を受診して担当医の指示に従うこと。また、女性はカルシウムも不足しがちなので小魚チップなどもよい。


3. 運動

ジムの近くに住む。 運動をしたいと思う瞬間は非常に希少だ。それをもらさず掴み取る必要がある。 仮に家賃が数万円上がっても、運動できる可能性が上がるなら払えばいい。サンクコスト効果(せっかく高い家賃を払ったのだから、という心理)も味方になってくれる。

家賃が厳しい場合は、職場へのアクセスを多少犠牲にしてでもジムを優先すべきだが、職場から遠すぎると疲れて行かなくなり本末転倒になる。いい塩梅の物件を探してほしい。

また、辛い運動は続かない。「楽しい」と思える運動を探すこと。 私はジョギングで汗をかくのが嫌いなので、水泳メインでプール付きのジムを選んでいる。走るのが好きな人はどこでも走れて運がいいが、雨の日でも走れるようにやはりジムをすすめる。

歩ける時は歩く、階段を使うなど、少し意識を変えるだけでも意味はある。

補足:運動せず、食事を減らすだけでいいか?

おすすめしない。体重を減らすこと自体が目的ではなく、BMI 22周辺が「最も予後がよい可能性が高い目安」に過ぎないからだ。

極端な例だが、「1日中ベッドで寝て過ごし、少食でBMI 22の人」と「活発に運動し、たくさん食べてBMI 24の人」なら、どちらが健康に長生きしそうか?

答えは実際に追跡調査しなければ分からない。

ただ、若年時のカルシウム不足は将来の骨粗鬆症リスクを高め、運動不足はサルコペニア(高齢で筋肉が激減し、予後が悪い状態)に関与する。私個人としては、食事調整だけでなく運動も強く推奨する。


日常生活に関しては以上だ。予防医療や検診については次回まとめる。