我慢嫌いの医師が実践する、ゆるい健康管理術【医療編】

目次
  1. 1. 感染症
    1. かぜ、インフルエンザ
    2. 肺炎
    3. 尿路感染症
    4. 帯状疱疹(ヘルペスウイルス)
  2. 2. 悪性腫瘍(がん)と検診
    1. 腫瘍マーカー全般
    2. 肺がん
    3. 胃がん
    4. 大腸がん
    5. 婦人科がん
    6. その他腹部臓器(腎臓、肝臓、胆道、膵臓)
    7. 甲状腺、前立腺
  3. 3.脳ドック

前回は、日常生活における食事と運動の「環境整備」についてまとめた。

本記事では、各疾患をいかにして予防し、早期発見するか、私の個人的な戦略を解説する。

※あくまで個人的な意見であり、診療行為や個別のアドバイスではない。参考にするか否かは自己責任であり、特に通院中の方は主治医の指示に従うこと。


1. 感染症

かぜ、インフルエンザ

風邪を引いて仕事を休んだり、貴重な休日を消費するのは大きな無駄だ。 最も重要なのは「手洗い、うがい」である。ほぼゼロコスト、ゼロリスクで物理的に病原体を排除できる。流行期のみやろうとすると忘れるため、常に行うのがよい。

可能であればインフルエンザワクチンを打っておくこと。かかってから病院へ行くより、先に済ませておく方が圧倒的に楽だ。

ちなみに、かぜやインフルエンザで病院へ来ても、基本的には対症療法しかない。抗インフルエンザ薬も「少し治りが早まるかも」程度であり、病院へ来るために体力を使うくらいなら、家でゆっくり寝ている方がいいと私は考えている(あくまで個人の意見だ)。

偽陰性について:

インフルエンザは発症24時間経過するまで偽陰性(かかっているのに検査上陰性になる)の可能性が高い。

もし、診断書などが必要な場合にも、24時間経過後の受診をすすめる。

自宅には念のため、総合感冒薬を常備しておくといい。熱、のどの痛み、咳、鼻水に効くものでいいだろう。薬剤師に聞けばどれがいいか勧めてくれる。経口補水液(OS-1など)もあれば安心だ。

肺炎

定期的に歯科を受診することをすすめる。 口腔内の細菌は、特に高齢になると肺へ垂れ込み、肺炎(誤嚥性肺炎)を起こすリスクとなる。若年者であっても、何らかの理由で緊急で気管挿管される状況はあり得る。

そもそも肺炎以前の問題として、死ぬまで自分の歯で美味しくご飯を食べられる価値は計り知れない。

また、自分で歯を磨きやすくするため、あるいは将来被介護者になった時に磨いてもらいやすくするため、可能であれば歯科矯正もすすめる。もちろん美容面での価値もある。

なお、高齢者であれば肺炎球菌ワクチンの対象となりうるので、かかりつけ医などに相談してほしい。

※歯を保つルーチンと具体的な商品については、今後の記事で紹介予定。

尿路感染症

女性であれば、トイレでお尻を拭くときに「前から後ろへ拭く」ようにするだけでリスクは格段に落ちる。

また高齢者において、オムツなどを付ける関係上、尿の出口周辺の清潔を保ちづらく、尿路感染症を起こして運ばれてくる人は非常に多い。

可能であればだが、他の部位がもじゃもじゃでもVIOのみは脱毛しておくことをすすめる。 将来自分が介護される側になった時、洗ってもらいやすく(清潔を保ちやすく)するためだ。

帯状疱疹(ヘルペスウイルス)

ワクチンの接種を強くすすめる。 対象は50歳以上(65歳以上で公費対象)だが、自費であっても50歳になったら打つことをすすめる。私も打つつもりであり家族にも勧めた。

帯状疱疹とは、神経に潜むウイルスが活性化し、身体に発疹と強い痛みを起こす疾患だ。

発疹自体は治るが、神経にダメージが残ると、その後ずっと痛みに悩まされる可能性がある。私は一生痛みに悩むのはごめんだ。

また、同じウイルスがごく低い確率ではあるが眼や脳周辺に感染し、重篤な結果を引き起こすこともある。その可能性を下げる意義もある。


2. 悪性腫瘍(がん)と検診

腫瘍マーカー全般

採血でわかる腫瘍マーカーが、検診としてどれだけ意義があるかは正直疑問だ。

身体に侵襲はないので取りたければとってもいいが、「腫瘍マーカーが陰性だったから」と安心して、他の確実な検査を疎かにするのが一番最悪である。

私は普通の血液検査や尿検査の数値を重視しており、そちらを定期的に検査してほしい。

肺がん

禁煙。 これに尽きる。最優先でやめること。禁煙外来も多くある。

がんにならずとも、COPD(肺が荒いスポンジのようになり、息が吐けなくなる病気。ややグロテスクなので画像は載せないが、ぜひ検索してみてほしい)になれば、常に全力疾走した後のような息苦しさが続き、酸素ボンベを持ち歩く生活になる。絶対におすすめしない。

検診としては、胸部レントゲンで大きな肺がんは分かる。CTなどを撮ればより小さなものまで分かるため、すごく気になるなら数年に1度撮ることは止めない(その程度の被ばくなら基本問題ない)。

ただ、絶対的な意義があるかは不明であり、あくまで「安心感を得るため」という位置づけだ。

胃がん

ピロリ菌検査(便中抗原)をすすめる。 胃がんの最大原因の1つであるピロリ菌を、可能な限り早く検査する意義は大きい。

若年者にも存在し、今この瞬間も胃壁を蝕んでいる可能性がある。 検査法は様々あるが、「便中抗原」と書いてあるものが精度と手間のバランスが良い。

Amazonにも検査キットは売っているし、病院でも対応しているところは多い。一度検査して陰性なら、再度測る必要はない。

胃カメラについては、ピロリ菌除菌後なら医師から指示されている頻度で受けること。

ピロリ陰性なら胃がんになる可能性は下がるが、40歳以上で気になるなら数年に一度受けてもいい。食道がんなどが発見される可能性もある。

なお、バリウム検査は胃カメラに対する優位性がなく、過去の検査だと私は思っている。やるなら胃カメラ一択だ。

大腸がん

大腸カメラについて。ポリープは一度取って終了ではなく、何度でもできる可能性がある。40歳以上なら数年に一度受けてもいいだろう。

婦人科がん

  • 子宮頸がんワクチン(9価)

  • 定期的な子宮頸がん検診(エコーあり)

子宮頸がんは、感染から発症まで早くて10年だ。10代で感染したら20代で発症する可能性がある。実際にそういう患者さんを見たこともある。

世間で色々なことは言われているが、そのリスクは確実に潰しておくべきだ。

原因となるウイルスは複数あり、9価ワクチンが最もカバー範囲が広い。逆に言えば、9価でも100%はカバーできていないため、可能性があるなら検診は必須だ。早期発見できれば、表面を削るだけで済むこともある。

また、子宮体がんなどについて婦人科の医師に聞いたところ、「内診では分かりづらいためエコーをすすめる」とのことだった。エコーを含むプランを選択すること。マンモグラフィーも適切に受けてほしい。

その他腹部臓器(腎臓、肝臓、胆道、膵臓)

基本は腹部エコーでよい。肝臓、腎臓、胆のうはよく見えるためだ。 CTまで撮る意義があるかは微妙なところ。他の検査と合わせて検診医に推奨されたら撮るくらいでいい。

胆道や膵臓は、エコーでもCTでも詳細に見ることは難しく、「大きな異常があれば分かる程度」と思ってほしい。正直、ここは気にしすぎないほうがいい。

先述の腫瘍マーカー(CA19-9、CEAなど)で分かることもあるにはあるが、仮に「偽陽性(何もないのに異常値が出る)」だった場合、心の平穏が大きく乱れることになる。ここは個人の価値観で決めることだ。

甲状腺、前立腺

両臓器で最も多い種類の腫瘍は、予後が非常によい。エコーで見れるので気になるならオプションで付けてもいいが、仮に何かが見つかっても経過観察となる可能性も高く、心の平穏と比較して個々人で判断してほしい。


3.脳ドック

これに関しては悩ましく、安易にはすすめない。

私自身、放射線科で研修していた頃、指導医と一緒に画像を診ていたが、小さな動脈瘤らしきものがある人はポツポツいた。見つけたら読影医としては報告せざるを得ない。ただ、一定以上のサイズでないと治療対象ではないことも多い(詳しくは脳外科医に聞いてほしい)。

仮に動脈瘤が見つかり「治療対象ではない(経過観察)」と言われた場合、「頭に爆弾を抱えている」と思いながら生きていくことになる。これはそこそこ心理的負荷が高い。知らぬが仏という側面もあり、個々人の価値観に大きく依存する領域だ。


以上はあくまで私の個人的な意見である。各自、自身の価値観で判断してほしい。また、通院しているなら主治医の指示に従うこと。